福岡高等裁判所 昭和24年(つ)392号 判決 1949年11月29日
被告人
中野広
外一名
主文
原判決を破棄する。
被告人中野広を懲役壱年及び罰金参萬円に、同秋丸茂を懲役八月及び罰金弐萬円に処する。
但し、被告人両名に対しこの裁判が確定した日から各参年間いづれも右懲役刑の執行を猶予する。被告人等において、右各罰金を完納することができないときは、金弐百円を壱日に換算した期間だけその被告人を労役場に留置する。
理由
被告人両名弁護人江口繁の控訴趣意は末尾に添附した別紙書面に記載したとおりである。
第一点について
原判決が各被告人の本件賍物故買罪における知情の点につき、各被告人の司法警察員及び檢察官に対する自白だけでこれを認定していることは所論のとおりである。
しかし、刑事訴訟法第三百十九條第二項の趣旨は一つの犯罪につき有罪の認定をするには、その証拠が本人の自白だけでは十分でなく必らず他にこれが補強証拠を必要とするというのであつて犯罪事実の一部について本人の自白以外に証拠がない場合にそれと他の証拠を綜合して犯罪事実全体を認定することを違法とする趣旨ではない。
本件において原判決は各判示事実について、各被告人の自白の外に各被害者の盜難届を証拠として引用しているのであるから所論のように賍物故買罪成立要件の一部にすぎない知情の点について各被告人の自白の外に他に証拠をあげていないからといつて前記法律の規定に違背し採証の法則を誤つて事実を不法に認定したものということはできない。論旨は理由がない。
〔註〕 本件は、結局量刑不当にて破棄。